2009年3月12日木曜日

クラウドはお好き?

クラウンドコンピューティング(以下クラウド)。はっきり言います。小生この言葉が大嫌い。
大嫌いと言う位だから、これは完全に私の個人的な嗜好の話しという前提で書きます。

クラウドコンピューティングに関して、下記Wikipediaより、

*****
従来のコンピュータ利用形態はユーザー(企業、個人など)がコンピュータ(ハードウェア、ソフトウェア)とデータを自分自身で所持し管理していたのに対し、クラウドコンピューティングでは「ユーザーはインターネットの向こう側からサービスを受け、サービス利用料金を払う」形になる。
*****

まず何か嫌いか?クラウドは「規模の経済」が働きすぎる。クラウドのビジネスをするのであれば、インターネットの向こうに多額の投資をする必要がある。データセンターや運営やサーバ、管理コスト。当然、利用者が増えれば、増えるほどこのコストは下がっていき、より良い「向こう側」を構築する事ができる。同時に「浮いたお金」でどんどん広告、宣伝を行う。利用者が増える。この循環がどんどん発生する。
当然ここには自己資本で始めた様な新規ITベンチャーがこのビジネスに参入する余地はない。すでにあるクラウド?上にサービスを構築するしかなくなるだろう。どこかのベンダーがそう表現する様に、クラウドベンダーは電気会社や水道会社の様な、インフラ企業となる事目指しているのだから当然かもしれないが、例えば革新的なソフトウェアのアイディアが生まれたとしても、それを作るのは、どこかのクラウドのインフラ上に構築する以外無い。と、するとそれはとても悲しい事では無いだろうか?クラウドはむしろオープン化の逆を行っている様に思えてならない。もちろんクラウドがデファクトになったとすればの話しだが・・・

ここまで書くと何かピンとこないだろうか?

クラウド勢はOSとオフィスソフトで覇権を握ったマイクロソフトを攻撃の対象としている。しかし、もしもどこかがクラウドで覇権を握れば、もはやそれを覆すのは至難の業になるのは自明で、結局は次のマイクロソフトを生むだけなのだ。
もちろん等のマイクロソフト自身もクラウド参入を表明している訳だが、まだまだいろいろな意味で含みを持たせている。どちらにも転べる様に・・・もちろん小生がマイクロソフトの熱心な信者では無い事も明言しておく。

ただ、
1・どこかのクラウドベンダーがマイクロソフト倒す。
2・マイクロソフトがクラウドの覇者となる
3・クラウドは流行らず、旧来のマイクロソフト型ビジネスが続く。
4・旧来のマイクロソフトビジネスとクラウドビジネスが共存する

実は小生はどうなろうが大した興味は無い。クラウドは嫌いと書いたが、もし仮に1・な世の中になっても受け入れる事はできる。クラウドが嫌いな最大の理由は、利用者側からみた時のクラウドの影響がどこまでどの様にあるかを考えた時である。
クラウド、クラウドと連呼したところで、それがもたらす影響は、

1・サーバの置き場所が変わる
2・支払う費用が変わる(安くなるとは限らない)
3・支払い方法が変わる

だけ。である。本当に「だけ」である。他に何かあるのであれば、是非教えて欲しい。
「インターネットに接続すればいつでも、どこでもプラットフォームに関係なく利用する事ができる」
「サーバのスペースや管理者が必要なくなる」
「使わなくなったら、辞める事ができる」
「ITを利用するのにどの様なサービスを利用したいか選ぶだけで良くなる」
幾ら、詭弁を弄した所で上記3つから外はれない。

○○コンピューティングという言葉で、思いだすのはEUC(エンドユーザコンピューティング)という言葉だ。ずいぶん昔に流行った言葉であるが、EUCがもたらしたインパクトは何であったか?企業内コンピューティングという観点で振り返ってみたい。

それこそ、20年も前に遡れば、パソコンはまだ企業では使われておらず、ホストコンピュータと呼ばれる大型コンピュータが企業における情報処理の中心だった。あとは部門毎位にホストコンピュータに繋がる端末(これ自体は何の処理もしない)と、ワープロと、電卓と言ったところだろう。
売上の集計や在庫管理、経理処理等々、何をするにも部門の利用者(エンドユーザ)は、電算室に依頼を出し、電算室の人間が自ら、プログラムを作成し、テストを行い。完成させる。というフェーズを経て、ホストコンピュータの空いている時間に、バッチ処理として流してもらう必要がった。すなわち業務担当者達はコンピュータを利用していた訳では無く、コンピュータに処理してもらっていた。分かりやすく言うと、どこか目的地に移動するにあったて、公共機関。電車やバスを利用するのか、自家用車で行くかの違いと似ている。前者は自分が好きな時間に、好きな場所で乗って、好きな場所で降りるわけにはいかない。あくまでも乗る場所は、バス停か駅。時間は時刻表に従う。降りる場所も決められた場所となる。後者は何の原則なんの制約も受けない。(法律と道路の及ぶ範囲で)

ビジネスの世界でパソコンの利用が一人一台となり、コンピューターの利用が各個人レベルに落ちた事は、非常にインパクトがあった。むろん当初はスタンドアロンで表計算やワープロが中心であったが、それでも「ちょっとした業務」を自分のパソコンで出来る様になったメリットは図りしれない。その後、企業内ネットワークが発達しクライアント&サーバ型のエンタープライズアプリケーションの登場により、いよいよホストコンピュータ中心のコンピューティングから、エンドユーザコンピューティングが活発化する。もちろん企業の中にいろいろな「ミニシステム」が構築されたり、気軽に導入出来るからといって部門レベルでのシステムが構築され、分散しすぎた企業内システムが弊害を引き起こしてきた事も事実だ。
しかし、インパクトの面で見れば、エンドユーザコンピューティングはクラウドコンピューティングとは比べモノにならない程、我々のコンピュータの利用の方法を変えてきた。

確かに理論上は、クラウドコンピューティングは規模の経済の上に成り立つ為、利用者が増え、業者も淘汰が進めば、支払うコストは少なく済む筈だ。しかし件のマイクロソフトはOSやビジネスソフトを圧倒的に支配するまでになったが、コスト面では利用者が恩恵を受けた事は少ない。むしろ望みもしないバージョンアップを強要され、本来払いたくもないコストを支払わされてきた感がある。

クラウドがそうであると危険を提唱するつもりは無い。なぜならクラウドが覇権を握る可能性が非常に低いと考えるからだ。小生、雲のこちら側の人々にも知り合いは多くいる。が、残念ながら「クラウド」という言葉など全く興味が無い人が殆どだ。経済危機の中でどう舵取りしていくか?本当に真剣だ。あちら側の人達との温度差を考えれば、小生がそう考える理由がそこにある。
あちら側の人達に望む事は、本当にビジネスに役に立つコンピュータ利用方法の提供であって、(エンタープライズアプリケーション導入プロジェクト成功率が3割?)、良く分からない「雲」を「こんどはコレですよ!」と、こちら側に売り込みをされる事では無い。

本来は経済危機に立ち向かう立派な武器になる筈のコンピュータを、「雲」などと言ってごまかすのはもうやめて欲しい。スタンドアロンでも、クライアントサーバでも安くて役に立つのであればいい筈だ。環境に役立てるのであれば、超ハイスペックになったクライアントPCのCPUをフルにぶん回した方がよっぽど良い。

(ちなみに小生は去年8月にノートPCを新調したが、全く快適では無い。WindowsVistaは最低のOSだ。折角のハイスペックなPCのパワーの殆どOSに取られ、業務効率はちっとも上がらない。)

おそらく向こう側の人達も本音では、こんな事言われなくても十分理解している。しかしエンタープライズのアプリケーションを企業経営にどう役立てるのかを提言するより、コンピュータ屋の得意なプラットフォームやテクノロジーの話しに挿げ替える方が楽に決まっている。雲の向こうにいる人達は神様になりたいのかもしれないが、顧客はもっと別の足元で悩んでいる。
最低限、その人達に解る言葉で伝えなければその宗教は流行らない。その為の伝道師達作りにも躍起の様だが、自分が儲ける事を考えている神様と、おこぼれをもらおうとする伝道師達の関係では、あやしげな新興宗教となにひとつ違いは無いのではないか?