2009年12月17日木曜日

「KPI」や「見える化」なんてやめとけ(貴社の場合に限り)

「戦略じゃなくてノルマでしょ」なんて事を書いたが、どうも最近新手のノルマが流行している模様。

その昔BSC(BalancedScoreCard)の流行を契機に、CSF(CriticalSuccessFactor)、KPI(keyPerformanceIndicator)なんて言葉が随分流行した。
BSC自体は、狂牛病の騒ぎの沈静化とともにあまり聞かなくなってしまったが???(笑)
KPIという言葉だけは一般化し、ビジネスマンであれば知らぬ人もいない程、色々なところで使われる様になった。

さて、売上、利益という結果数値だけからの管理を脱するという意味では、BSCブーム後は「見える化」とか「経営ダッシュボード」「プロセス管理」とか色々表現こそ違いはあれ、結果数字だけを見るのでは無く、多角的に経営を左右する因子を的確に捉えオペレーションしていく。という事は一般的になってきたと思う。

その中で、「BSC」や「見える化」といった表現方法こそ差異があれ、KPIだけは言葉として生き残ったというのは何となく納得できるし、こういう考え方自体は酷く真っ当なもであろう。

さて貴方の会社で、以下の項目の内容は正確に把握できているか?

・営業マンの一ヶ月の平均訪問回数
・クレーム発生件数
・一顧客あたりの平均単価
・間接業務の労務時間
・Webや電話からの問い合わせ件数
・従業員の平均労働時間
・品切れ発生率
etc

かなり適当に、それっぽい項目を並べてみたが、こういった項目の内容の結果が、BS/PLに結果数字として載るのであって、結果に至るプロセスをしっかりと管理する事こそが重要だ。

で、これに目を付けたのがIT屋さん(笑)。とにかく「KPI」大好き!(笑)「見える化」ソリューション!(笑)


あるSFAベンダー(今や飛ぶ鳥を落とす勢い)のコンサル責任者の方と話しをした時に「KPIでしっかり管理すれば必ず業績が上がる」と強弁されて、目が点になってしまった。
こういう方って、なんと言うか、頭は良さそうなんだけど「リアリティー」が無いのよね。
自分自身が血反吐いて業績を向上させて来たとか、何かを成したとか、そいう経験、体験というか・・・(別に血反吐を吐く必要は無いんだけど)だから平気でこんな事言っちゃう。

いや、成長市場にいたり、同社の様にバズワードに乗ってガンガン売れている時は良いのよ。KPIでも。
っていうか、KPI管理のお陰で上手く行っていると信じる事ができる。という方が正解かな?

いいかな。上に出した様な指標はあくまでも指標でしかないんだよ。
訪問件数をカウントされた所で、実際には「で、どこに訪問する先なんてあるのよ?」ってなるよね。それでも無理に、訪問件数未達の者は減給だ!ってやったら、顧客の迷惑顧みず、訪問しまくって顰蹙買うのが落ちか、ウソ訪問し始める。確かに営業の場合、「兎に角、人に合う、会えばなにかある。合わない限りは何も生まれない」これは確かにその通りだし基本なんだけど、一生懸命顧客の事を考えて有効な提案を持って行き、有難がられる1回の訪問と、ノルマの為に、半ば無理やり押しかけての10回訪問。どちらが業績にインパクトを与えるのか?って議論もあるよね。こういうのは常識的に状況状況で都度判断すべきものなの。

野球でいうなら、BS/PLはチームの勝敗の数と言って良い。最終的にそれでチームの優勝が決まる。
これに対して、こういう指標はチーム打率や防御率、奪三振、ホームラン数、出塁率、etcなのだ。

これをリアリティーの無いIT屋さんの発言で例えると、「チーム打率3割、防御率2点、チーム本塁打200本・・・KPIを定めて、しっかり管理すれば間違い無く優勝できる!」って言っている様なもので、小生が固まってしまう理由も解って頂けるだろう。
チーム本塁打数が最重要目標だ。本塁打を打てばボーナス弾むぞ!ってなったら、バントなんて誰もしなくなるよね。確かに本塁打は多いに越した事は無いけど、バントや四球選択だって状況によってはとても重要。その逆も然り。

これは殆ど絶望的な勘違いなんだが、結局「KPI」=「目標」としてしまうから駄目なんだ。
KPIはindicator=指標であって決して目標=targetでは無いのだ。にも関わらず、KPIを目標だと思ってしまっている人や企業があまりにも多い。

だからと言って「指標」が必要無いなんて事は無い。チームの施策として、本塁打数の向上を目指す。その為にホームランバッターをトレードで呼んできたり、特別な練習をする。その上で方針がどこまで施策が有効に浸透して実行されているかどうかを計る必要はある。効果が出ていないのであれば、やり方を変える必要がある。それ以外の指標だって出来る限り多くの項目で、詳細な情報を、可能な限り迅速に把握できた方が良い事は言うまでもない。

漫然とマネジメントしていれば、何時までたっても変わらない。注力する分野を絞る事は重要だ。更にただ絞っただけ、例えば重点顧客からの売上を○%UPさせる見たいな営業施策を出しても、実際にそれだけでは実行される可能性は低いのも言うまでも無い。

どうすれば重点顧客からの売上をUPできるのか客観的、合理的に徹底的に考え抜き実行しなくてはならない。その結果上手く進捗できているのか?そうでないのか?あくまで「仮説の検証」為の道具がダッシュボードの様な機能で、それを計る項目がKPIなのだ。
打率や防御率など色々な指標が測れたところで、イコール強いチームができる訳では無いんだヨ。

にも関わらず、「重点顧客からの売上を○%UP」で、ロクに仮説設定もせず「KPI=重点顧客への訪問件数」みたいな事を平気でやってしてしまう。
そして、結果は、
「重点顧客の売上が全然伸びてないし、訪問も出来ていないじゃないか!バカモン!」(経営者)
「そりゃ、出来れば苦労しね~よ」(現場)
で終わり。
現場にしてみれば「だったら見せるか!ボケッ!」となる。普通に。

KPI・・・今日も、ピーピー、言わしたろかっ!

IT屋さんだとしてもコンサルタントを名乗るのであるならば、正しい仮説設定を支援した方よっぽど本質的だとおもうのだけどな~まあ、そんな事してしまうと肝心なシステムがいつ売れるか判らなくなるから無理か・・
KPIで管理されているし(笑)

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